2013年8月2日金曜日

第5回 人環SCD議事録

第5回 人環SCD議事録

平成25727() 1500
@ ボアソ24F 人環資料室


石神先生の講義「巨大な隣国 中国について」
 ※石神先生は昨年度は研究のため、上半期は中国の上海、後半はイギリスに滞在。

<上海で見た圧倒的な“格差”>
●●貧富の差●●
・上海は世界の金が集まっている
・圧倒的な所得配分の格差
・ジニ係数…1に近づくほど不平等
⇒中国の公式発表では0.4713億の人口の中で、0.1億人が全体の富の2分の1を持つ。残りの2分の1の富のうち、なんと1億人が4分の3 ※(←近年、この層が急激に増加)、残りの人たちが残った4分の1の富を分け合っている状態。10年ほど中国には通っているが、ここ数年の貧富の格差の拡大は尋常ではない。
 <ジニ係数:日本は0.33(2006) アメリカは0.382008年)>


・貧しい農民は8億人
都市に出てきた農民が2億人…農民工「流民(るみん)と呼ばれ不安定な生活。(男は建設現場、女はミシン打ち等で生計を立てている)
まともな仕事に就けたとしても、ウェイトレス (150(700円程度))。かたや、金持ちの同世代の若者が1100元の料理をたくさん注文し、たくさん残して店を出る。
⇒情報が行きわたっているので、フラストレーションを抑えるのは難しい。

・農村に戻れない理由
化学肥料の使い過ぎで土地の生産性が落ちている。また、農村戸籍と都市戸籍(長年の一人っ子政策のため、闇戸籍(確認されていない戸籍)もある)で、それぞれ移動ができない。
 ⇒農村戸籍の人は都市で正式に住宅を借りることも、職に就くことも許されていない。

・大学卒業者の不満
3300校あり、毎年 卒業者は700万人だが、その半分が正規就職できない。
正規の就職ができなかった大卒者のうちアルバイトか無職…、一家や一族の期待を一身に集めて厳しい競争を勝ち抜いて大学で学んでも仕事がない。
大卒者の就職先としては、外資系または、国営企業に入れれば「勝ち組」。大卒の「負け組」の不満がたまっており、かつ高等教育を受けている分、政権にとっては不安定要素であり心配の種。
なお、大卒と中卒の間にも大きな格差あり。その壁を超えるのは極めて難しい。

・富裕層に不満はないのか?
→ネットがつながらない。テレビが自由に見れない。
ネットの登録は必ず実名制(仮名は×)。 誰が、何を検索しているかをチェックされている。体制批判に関わる検索などをし、イエローカードが溜まると、メール等何でもチェックされるようになる(※石神先生の予測)
TVも、少しでも危険そうな要素があると、ブラックアウトが頻繁に起こる。(NHKの衛星テレビでのニュースが突然見れなくなることが、よく起きた。)

・かつて栄えた郷鎮企業は弱体化。昔は作ったら売れたが、今は品質の良いものしか売れないため競争力が低下した。
  【郷鎮企業】
中国の郷()と鎮(町)における中小企業人民公社時代には社隊企業と呼ばれたもので、人民公社廃止後に郷鎮企業と改称村営私営などさまざまな形態持ち市場経済化のなかで飛躍的発展

・続く上海の建設ラッシュ
上海の街には、100m以上の高層ビルが4000本くらい建っているが、完成後居住者やテナントは入っていないところが多い。日本ではビルに名がついているが、これらのビルには名もつけられていないのがほとんど。
人が入らないビルなのに、作り続けており、それを富裕層が買っている。夜も電気がつかず真っ暗。

20代の小金持ちが多いが、どこからそんな大金が出ているのか?
→勝ち組企業に勤めた青年には銀行がガンガン貸す。実体のない金。
国営企業なら倒産しても国が痛いだけだが、シャドーバンク(いわゆるサラ金)も多く、連鎖倒産の可能性あり。

・創意産業(クリエイティブな産業)
中国でも起こっている。上海の歴史的建造物をリノベーションし、若いクリエイティブなデザイナーが使う場所になったり、観光名所になったりしている。(イギリス ロンドンのテートモダンや、横浜の赤レンガ倉庫のイメージ)
富裕層の子供は大切に育てられ、習い事等に通う(ex.お絵かき教室の例)
生徒は熱心→自分の将来食っていけるかどうかがかかっている。

・昨年9月の日本排斥運動について
基本的に中国の若い人は日本が好き。
富裕層にフラストレーションを抱えた中間層(富裕層の下の層で、完全な農民ではない層)の怒りを抑えるためのスケープゴートとして、日本をたてた。

・アメリカの格差と中国のちがい

アメリカはもともと格差社会(アメリカンドリームという言葉に象徴される)だが、中国は共産主義 一度「平等」という理想ができてしまっているからおかしなことになっている。

日本でも東京1.5―沖縄0.7と、約半分くらいの格差はあるが、中国ではそれは20倍。

・どう統制するか
全首脳陣は「親民」を旗印に民衆と向き合っていた。現在の首脳は「統民」である。若年層の不満を背景に今、大学の授業を統制し始めている。
しかし大学教員はエリート、代々そういう家系で一種の特権化している。大学教員に指示する(国の方針に教員は逆らわない、というか逆らえない。)

・体制に批判する人が台頭できない社会
→そういう人は国会議員になれない。民主化はなじまない。
For the people は考えるが
By the people は考えない社会。それが中国なのだと、現地で聞いた。

・日本が中国とうまく付き合うには?

⇒「(ある意味で)中国の属国になる」
アメリカは中国と戦争を絶対にしない(世界大戦になるから)。いざとなったらアメリカは日本を守ってくれない可能性が高い。13億の人間を抱える大国の中国を敵に回すことは基本的には考えられない。もっと大人な対応をしていく必要がある。中国の人が喜ぶ仕事は何か、中国に何ができるか?くらいの気持ちで接していく。
 中国は“格差”と“人口構成”という2つの大問題を抱えていて、まさに“隣国の火事”。それをうまく助けていくべきではないか。中国は、自身の国が発展することに対して、日本人にでも非常にウェルカムである。


●●日本と中国を結ぶグリーンマネジメント●●
 ※石神先生は、FSで毎年中国の黄河高原の緑化現場に学生を連れて行く。
・砂漠緑化のモデル地区がある。
ポプラによる緑化:早く大きくなる。枝打ちが大事(葉の蒸散作用で地下水の水位が下がる→逆に砂漠化につながる)

・沙棘:サジ(植物)による緑化
ポプラは売れない。売れることが現地の農民の協力を得られるポイント。サジの特徴として、窒素固定を行い自分で土中に肥料を作れる。実もジュースになる(フラボノイドが豊富)→収入につながる。農民のインセンティブとなることが環境保全活動において大切。



■■次回のSCD 日程() ■■
119日 1600開始 相模原市役所 竹内さん(テーマ:経済政策)

(次々回は2014125日の予定。詳細は119に決定へ。)

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